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戻って来たら、三年生のみいちゃんが半べそになって「たかちゃんが、猫をばらばらにしちゃった」と訴えた。ぎょっとして覗くと、段ボールの中は空になっていて、猫たちはちりぢりに道やら空き地やら、走ったり歩いたりしている。まだら模様や縞模様が見え隠れする雑草の中、猫を捕まえるのは無理だった。
「どうしよう」
「ばらばら猫」
みんなはべそ顔になっている。
わたしは実はこの時点で、もう面倒くさくなっていた。
いつもペットが欲しいと言っている心の底では、借家では絶対に無理だと判っていた。どうせ今回の猫たちも引き取り手がなくて、どうにもならないことをどこかで分かっていた。
にいにいにゃーにゃー好き勝手に遠のいてゆく猫を眺めながら、わたしは「自由にしてあげようよ」と言った。小さい子たちはそれで納得して、お昼ご飯を食べにうちに帰っていった。
良い天気の日で、ロングTシャツが暑く感じた。
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それから何日かの間、近所では、どこかでいつも猫の声が聞こえた。
逃げていった子猫のどれかが鳴いているのに違いなかった。
姿がちらっと見えることもあったが、捕まえようといても逃げてしまう。
登下校の時、車にひかれている子猫を見かけた。思わず凝視した。確かに見覚えのある毛の柄であり、大きさからいって、あの子猫のどれかに違いないと思った。
努めて考えまいとしたが、心がぐうんと重くなった。しばらくわたしは罪悪感に苛まれ、元気をなくしてしまった。
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