ゆっくり浮き上がって来るかのように

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 ひろちゃんは大人しいし、よく泣くし、運動も勉強もできない。どちらかというと悪口を言われている子だった。  だけど妙に気が合った。わたしもひろちゃんも同じように動物が好きで、校庭に猫がいると大喜びして、ちち、ちちち、と口を鳴らして競うように呼び合ったものだ。  「猫ほしいねー」   「犬でもいいね」  そう言い合うこともあった。  席が離れているし、それほど仲が良いというわけではなかったけれど、わたしたちは互いに「あの子は優しい」と分かり合っていたように思う。  そういえば、優しいひろちゃんの様子も最近おかしい。  ひろちゃんも周囲に流されて、一緒になってわたしをはぶっているのかな、と、思って悲しく感じていた矢先のことだった。  金魚事件のおかげで、ひろちゃんは変わらず優しい子だとわかったけれど、だけど、それは教室に戻るまでの間だけだった。  クラスに戻ったら、ひろちゃんはいきなりよそよそしくなった。  「どこいってたのー」  あみちゃん達のグループに呼ばれて、ひろちゃんはすっと行ってしまった。給食の時間は終わりかけている。食べるのが遅いひろちゃんは、あみちゃん達のグループで明らかに浮いている。なのにどうしてこのところ、手のひらを返したかのように、あみちゃんたちはひろちゃんを仲間に入れるのだろう。       
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