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苦しげに歪められてもなお整った顔は、そのままゆっくりと私の頸に埋まった。
私が震えているのに気づいたのか、抱きしめる腕が、壊れ物を扱うみたいに優しい。
「―あの日も、こんなつもりじゃなかった。お前が保健室行くの見て…明日で最後と思ったら、勝手に足が動いてた」
冬馬が話す度に、熱い吐息が私の耳にかかる。
「もう会えなくなるのなんて、耐えられなくて」
感情を押さえつけながら発される声が、いつもより低くてゾクゾクする。
「無視すんな、逃げんな、こっち見ろって…ずっと好きだったって言おうとして」
いつの間にか私の体の震えは止まっている。
まだ小刻みに視界が揺れているのは、私を包んでいる冬馬が震えているかららしい。
「それなのに…告白する前に寝言で振られて」
「え…?寝言で振ったって、どういうこと?」
バッと顔を上げた冬馬の顔はさっきと変わらず苦しげだった。
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