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 そんな私に構うことなく、冬馬の告白は続く。 「それをお前、たった一言、それも寝言で振られて…無性にムカついて、やり切れなくて…お前が俺を見てくれないなら、一生手に入らないなら、恨まれても憎まれても呪われてもいいから、体だけでも欲しくてあんなことー」  そう語る冬馬の声はどんどん小さくなっていったけれど、最後に、はっきりと『悪かった』と言った。  あの日のことについて謝られたのは、月野リゾート以来だ。  素面(シラフ)な分、ズシンと重みのある言葉に、何て答えたらいいのか分からない。  笑って「もういいよ」と言えないのは、未だに水に流せてない証拠だ。  しばらく続いた沈黙の後、冬馬が、いつもの強い眼差しで、私をまっすぐ見て言った。  「…でも、俺、前も言ったけどお前にしたこと、悪いとは思ってるけど、後悔はしてない。お前にとっては最悪で消したい過去でも、俺にとっては初めてお前を抱いた絶対に忘れられない日だから」
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