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「も、もう十分っ!!」
結局、耐えきれなくなり、冬馬のシャツを握りしめて、叫んだ。
「十分?こんなんで、満足されちゃ困るんだけど」
「と、とりあえず、進めて。時間なくなっちゃう」
「進めるって…どうして欲しいわけ?」
「え?」
「どうして欲しいかちゃんと言えって言っただろ?」
「…っ!!」
ここに来てやっと、冬馬の意図に気づき、抗議しようと顔を上げた。
でも、それをさせない冬馬の挑むような目―
その目が言っている。
『俺も言ったんだから、お前もちゃんと言え』
奥深くに、期待と欲情をちらつかせながら。
いつもぶっきらぼうで、下品なことしか言わない冬馬が、隠し続けてきた本音を言ってくれた。
少しでも誤魔化したら、何の意味もなくなってしまう。
そして、永久にこの問題と向き合う機会を失ってしまう。
やるしかない。
もういちど、心の中で唱えた。
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