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「ただいま…って、なんっで堂本センセーがうちで飯食ってるわけ?」
帰宅するやいなや発動した冬馬の不機嫌オーラに、センサーが振り切れそうに反応する。
「お父さん、お帰りなさーい」
良い意味で空気を読まない真依子は、小学一年生になった。
カレーの最後の一口を急いで飲み込み、真依子が冬馬のところに駆け寄っていくと、冬馬の空気が微かに和らいだ。
その隙に、一息でこの状況を説明する。
「今日…ちょっと具合悪くなっちゃって、家まで送ってもらったの。真依子のピアノのお迎えまで引
き受けてもらったから、そのお礼に」
「お邪魔してるよ」
「具合悪いって、風邪か?だったら尚更こんな奴に飯食わせてないで、さっさと寝ろよ」
「俺もそう言ったんだけどね。朝からカレー仕込んであるからって誘われたら、つい懐かしくなっちゃって。依子の数少ない得意料理、昔よく俺のマンションで作ってもらってたから」
大地先輩の余計な二言で、真依子が和らげた空気が一気に張り詰める。
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