12/16
前へ
/98ページ
次へ
 なのに。  冬馬は、  「とにかく、春馬の学ラン姿見てヤバくなったら、俺のイ◯ポ話思い出せ。お前なら、絶対それで蹴散らせる」  とだけ早口で言うと、私の唇を塞ぎ、押し倒した。  抵抗しようにも、心なしか冬馬のキスも愛撫もいつもより激しい。  例のきっかけを思い出したことが、そうさせているんだろうか。  呼吸さえままならないのは、快楽のせいか、別の何かのせいかわからないほど乱されて、結局、気づいたら朝だった。  その後も、それとなくこの話題を持ち出して、真相を聞こうと試みたけれど、上手くはぐらかされ続け、あっという間に春馬の入学式を迎えてしまった。  結果はご覧のどおり。  でも、私が平気だったのは、冬馬が私の一言のせいで不能になった話を聞いたからじゃない。  玄関で冬馬と下らないやり取りをしながら、自分の胸の痛みをハッキリと自覚させられていた。
/98ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5200人が本棚に入れています
本棚に追加