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7
「いつまで泣いてんだよ。卒業式ならともかく、入学式だぞ、これ?」
帰り道、冬馬と春馬のはるか後ろを一人とぼとぼと歩く私を見かねて、春馬が立ち止まった。
やっぱり私にとっては『入学式』も鬼門だ。
未遂とは言え、春馬に現場を見られたのと、春馬の心身の成長のダブルパンチで、式の最中もずっと涙が止まらなかった。
「ご、ごめんっ、ごめんね、春くん。大事な日なのに、朝から変なもの見せて。これからもっと気をつけるから」
「もういいって。大体、いい年して、あんなところでサカった父さんが悪いだけだろ。ほら、行くよ」
ちょっと荒っぽく私の手を握って、冬馬のところまで早足で歩く春馬。
手をつないだのなんて、いつぶりだろう。
掌も、身長も、いつの間にこんなに大きくなったんだろう。
と、感慨に耽っていると、冬馬がこっちに向かって歩いてきた。
「お前、やっぱガキだな。惚れた女抱きたくなるのに年とか関係ねーんだよ!」
言いながら、手刀で私と春馬の手をぶった切った。
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