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 私の知る限り、3台目の黒塗りセダンが、玄関前にベタ付けしてある。  …何だろう?この、違和感のある雰囲気。  緊張と興奮の混ざり合ったような…。冬馬、何か企んでる?  「どうしたの?急に」  「いいから、乗れ」  視界の端で、後部座席に置かれた大きな紙袋を捉えたけれど、この時は冬馬の妙なテンションの方が気になって、すぐに意識が逸れた。  春馬の学ラン姿を見て倒れたくせに、冬馬が目的地を告げずに走り出しても、全く不安は感じなかった。  ところが、二十分くらい車を走らせ、周囲の景色が変わり始めたのに気づいた私は、外し忘れていたひまわりバッジを隠すように握りしめた。    「え…?冬馬!?ちょっと何考えてんの?」  「は?お前のことしか考えてねーよ」
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