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ギシ、とベッドを軋ませ、冬馬の胸に顔を埋める。
背中に腕を回しながら、深呼吸すると、白いシャツから、うちの柔軟剤と冬馬の体臭が混ざり合った心地よい香りが鼻腔をくすぐった。
ほっとする。自分の馬鹿げた格好も気にならない。
10年以上、一緒に生活している冬馬と、今更理想の初体験だなんて、無理に決まってる。
それでも、春馬のためにも、自分のためにも、やるしかない。
あと、このしつこい夫のためにも。
「…ちゃんと好きって、いっぱい言って」
恥ずかしさを振り払って、請うように見上げると、冬馬の出っ張った喉仏が大きく上下し、私の背中にも冬馬の腕が回された。
「…好きだ。ずっと…ずっと好きだった。ずっとお前だけ見てた」
冬馬曰く、あの日、私が寝言で江藤先輩の名前さえ呼ばなければ、私に届いていたはずだった言葉。
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