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幼馴染から渡されたチョコとラブレター、くれた人は別だった。
二月十四日。
「リョータ、これ。受け取って」
「え」
ピンク色の包みを受け取って、僕は目を白黒させた。差し出したのは、ヒナコ。
僕のクラスメイトであり、幼馴染だった。
「な……なんやねんこれ」
「見てわかんないの。今日という日に、ピンクのふわふわラッピング。これがチョコレートでなかったら詐欺やん」
と、肩をすくめて笑う。ちょっと首をかしげ、ポニーテイルをふわりと揺らして。
「あほちゃうん」
それが、ヒナコの口癖だった。
僕は絶句した。義理チョコ――普通に考えればそうだろう。
だがヒナコとは幼稚園からの付き合いで、中三の今までずっと同じクラス。それまでに一度だって、チロルチョコ一個たりとも貰ったことが無いのである。
それを、卒業間際の今になって――
「ほ、本命?」
呟きながら、僕はそれを確信していた。
チョコの下に、小さな封筒がついていた。簡素なものだが、封のシールがハートの形。
こんなんどこからどう見てもラブレターやろ。なんぼなんでも、義理チョコにラブレターを付けるやつはおるまい。
ヒナコ。お前、僕のこと好きやったんか。
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