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友達、と先ほど自分が言い出したのにも関わらず、既にその言葉を撤回したいと思っていた。恥ずかしいことを、と浮いているために遠く見える地面を見つめる。
先ほどの鳥型兵器が飛んでくる。私が手を差し出すと、そこに柔らかく着地した。
「さっきはありがとうね」
「試作器が失言するのも、珍しいことで」
ほとんど完成形だとまで言われたのに、と鳥は続けた。
「私だって、浮かれちゃって」
「……博士が、私たちの親だから?」
私は首を振った。
「思ったよりも、良い人だったなって」
「良い人、か」
俺たちは親不孝者だ、と鳥は言った。もっともだ、と私は返した。兵器の中で上官たちにオーダーされていないのは試作兵器である私だけであったため、結果として私以外の「兵器」は全員虐殺犯となってしまった。
「あなただって元は、救助用の俯瞰機だったのにね……」
私は彼の頭を軽く撫でた。兵器の彼らに私を襲うプログラムはされていないのだ。
「私だって、本当はあなたたちと同じになるはずだったのにね」
「最後の試作兵器、要らなくなっちまった」
「うん、あなたたちが仕事しすぎて、ね」
皮肉めいた言い草に、彼は自虐的に笑った。
「そいつは愉快だ――休暇も取れねぇ職場だな、おい」
「笑い事でもないんだけれどね」
「ああ、分かってるさ。ああ」
不幸なことに私には、彼らに搭載されたものよりも高度な思考処理機構を組み込まれていた。そこに、思考するだけの時間が十分すぎるほどにあったのも、不運だったのだろう。
本当は、崖に来たのも半ば自殺のためであった。たかが飛び降りた程度で死ねるとは思わなかったが、それでも試してみようと思ったのである。そこで生みの親と出会うのは想定外であったが、ある意味収穫ではあった。
「……博士は、俺たちのことをどう思った?」
人間たちの命を脅かす側に回ってしまった彼らの気持ちを、彼らを造り出した張本人である博士に伝えるすべは、私には思いつかなかった。しかし、逆なら――と私は彼の頭を撫でながら、口を開いた。
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