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「君の罰っていうのは、具体的にどういう」
「詮索、するんですね……」
「嫌なら話さなくていいよ。でも、催促するわけじゃないけれど、僕のも訊いてきたし、ね」
本心であった。正直なところ、罰が云々よりも、結局のところ僕は誰かと話がしたかっただけなのだろう。
しでかした過ちに苛まれて自責に駆られ、あるいは世間から後ろ指をさされて、独りで生活するようになってから、誰かと会話するなんて有り得ないことであった。最後に誰かと会話した記憶など遠い昔のように感じる。
久しぶりの客人。それが、どんな形であれ嬉しかったのだろう。話題なんてどうでもいいし、仮に機嫌を損ねられても構わない。なんなら、ここで恨みを晴らされても構わない。そんな気持ちに、遅れて気づいた。
「……科学者さんが信じるのかは分かりませんが」そう、ファラは前置きした。「私のこれは、そう良いものでもありません――ただの、呪いです」
「呪い」
恐らく、呆けた顔をしていたのだろう。彼女に少し笑われて、それから自分の表情に気づいた。
「非現実的ですよね」
「いや、そうじゃなくて……」
人が手品以外で宙に浮かぶなど、そもそも有り得ない話である。今更、呪いだの呪術だの言われても、信じないわけにもいかない。
「地に足をつけられない呪い――正確には、地上に見捨てられる呪い、です」
「見捨てられる、か……」
僕と似ている、と思った。もっとも、僕のような人間と同列に並べては、彼女に申し訳ないが。
「神様に、『お前はもう地を歩くな』と」
そんなものは存在しない。――否、正しくは歯車と螺子で構築された機械仕掛けの神くらいしか、僕は知らない。
「……そんなものは、まやかしだよ」
誰が見ても明らかな偶像に縋りついて、こうべを垂れて祈りを捧げる。ただ、僕はそれを実現しただけなのだ――僕は悪くない、そう信じられるほど僕は豪胆ではなかった。
「つくづく、無責任だよな」
「え?」
「ああ、いや。違うんだよ」
あるいは、人工的に作られた遺物でも神と崇めるほどに、彼らは追い詰められていただけなのかもしれない。いや、追い詰められていたのは僕だろうか。
「神なんて、ロクなものじゃない」
「初めて意見が一致しましたね」
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