4人が本棚に入れています
本棚に追加
町は、すっかりロマンチックの集合体だ。
光輝くイルミネーション、クリスマスという一種の幻想に誘うクリスマスソング、ケーキの箱やフライドチキンの容器を片手に持つ親子やカップル。
しばらくすると雪が降ってきた。チラチラ、チラチラと……。
ゴッドボッチは手の平を広げて冬を感じる。季節の感触は男の心を動かす。
スーパーでケーキを買った。ホワイトクリスマスに白き甘美を求めたのである。
さらにクリスマスに入り込みたくなった。
男はカラオケボックスに行った。時期のためか、学生の集団がたくさんいた。見知った顔もあったが、お互い干渉はしない。それが自然の摂理というものだ。
ゴッドボッチはカラオケボックスの室内に入り、隠していたケーキを取り出す。
四人で食べれるサイズのケーキだ。ご丁寧にローソクとイチゴもそれにつけて。
ローソクに火を灯す。火のささやかな光が、男にとってクリスマスプレゼントのように思えた。
「恋人はサンタクロース」
ゴッドボッチはキレイのキの字もない汚い声で歌う。
クリスマスへ情熱を捧げているのだ。
片手にマイクを持って歌っている姿は、どことなく幸福そうに見える。
クリボッチ、フォーエバーボッチ、ゴッドボッチ。それがコイツという存在。
この男は誰からも理解されないのが運命なのか?
なぜこうなった?どうしたらこうなる?
存在そのものが哲学だ。
コイツを解明しようと、隣にいてくれる人は誕生するだろうか……。
それは恐らくゴッドボッチの願いでもあると信じたい
最初のコメントを投稿しよう!