ある種の境地

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見渡すと、顕微鏡やらメスシリンダーやらガラス容器がたくさんある。理科室ではない。実験室だ。 ここでは主に微生物について学ぶ。ゴッドボッチがなぜこの授業を選んだかは不明。 微生物に興味があるという素振りも毛頭ない。 なぜならコイツは、授業中に寝るか、ライトノベルを読んでるかしかないのだから。そんな因果でテストの点数はいつも赤点ギリギリ。 お前は学生という意識があるのか!愚か者。 しかし、なぜなのか見当もつかないが計算問題には執着している。 最近この授業では、よく計算問題をやる。先生曰く、計算力がないと社会で恥をかく。それは仕事とは数字を意識するものだから。だそうだ。 ゴッドボッチはその言葉に刺激されたのか?それだけは妙にやる気があって、問題を解くのが早い。 普段、愚図のクセして頭の回転は速いとでも言うのか。まったく謎だ。 そして自分より先に問題を解かれると、舌打ちするくらい闘争心に燃えている。コイツにも血が騒ぐなんてことがあるのだろうか……。 ゴッドボッチは完全に調子乗っている。自分の計算力を周りに知らしめたいのか、隣の席に座っている色んな意味で可哀相な女子に解き方を教え始めたのだ。 ゾッとする。頼んでもないし、勿論仲良くもない。 コイツは自意識が膨張しているのだ。その自意識が他者を巻き込んで、嫌な気持ちにさせて……。 ああ、この世界は残酷だ。 ある意味尊敬する。人との距離感がまるでつかめてない。社会では、計算力よりそっちのほうが重宝されるだろう。
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