ある種の境地

6/7
前へ
/7ページ
次へ
昼休み。ゴッドボッチは五分で昼食をすませて図書館へと向かう。 アニメ情報誌。そういったものが、この学校の図書館にはあるのだ。おそらく、生徒たちのニーズに応えた結果であろう。 ゴッドボッチはたいていそれを読む。二次元的美少女が、あられもないポーズで描かれているのを眺めるのがコイツの至福の時なのである。 「ぐへへへへへへ」 興奮がストレートに、音として世界に出現する。それは誰も得をしない誕生である。こんな音が耳に注がれたら聴覚が錯乱してしまうのではないだろうか。 ああ、気持ち悪し。 昼休み終了まで五分前、ゴッドボッチは図書館を出る。 コイツの視界にあの子が映る。一年生の小柄な少女だ。 「えへへっえへへへへ。はっは~はぁー」 高ぶりがピークに達する。ゴッドボッチは漏らしたかのように声を出す。 これは、異質だ。異常だ。緊急事態だ。不審者と思われてもなんら違和感がない。 少女。仮名でK子は目の前の男に以前から不信感を抱いていた。目が恐ろしいのだ。K子を身震いさせるのだ。 ゴッドボッチはなぜかK子に夢中。ストーカーに近い感情を純潔な少女に向けている。 少女をガン見する変態ボッチ。世の中は不条理だ。 このような組み合わせが現実となるのだから。 耐えられなくなった少女は走って、男から遠ざかる。少女が通りすぎた時、流れる髪からシャンプーの匂いがゴッドボッチの嗅覚を刺激した。 「えへへっ」 ご満悦な表情を浮かべる男。K子を感じたような錯覚に、陥ったのである。
/7ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加