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いつかの日より暑く感じる10月のある日、俺は姉と共に3度目の文化祭に出ていた。
今回まさかのゲスト出演者として。
あの日、姉により撮られた写真・動画が上手いこと加工処理されSNSにアップ。思ったより有名なレイヤー『ルーナ』だった姉は『ルーナの弟』として俺を紹介し今後も一緒に活動していくと発言。
姉弟で男同士(片方は男装)の絡みの活動。
それは実際の写真などがあったのも大きいと思うが想像以上の威力を発揮し、今をときめくコスプレイヤー姉弟として活動中です!
イェイ!……………なんてな、はぁ。
だってさ、あの写真撮られた次の日、大学に行ったら皆の視線が刺さる刺さる。サークルも同じあの友人に聞いたら見せられるSNS、俺の知らないところで俺がコスプレイヤーであると発覚し、その為に向けられた視線であることを知る。
大学中に、世界中、は言い過ぎかもしれないけど少なくとも姉のフォロワーに知られておりもう逃げ場は無かった。
世の中はさ、諦めが肝心だよな。もういっそどうでもいいわー、と振り切って姉に言われるがままに、されるがままに衣装きて、時にウィッグを付け、化粧もして、ってしてたら俺も名のしれたコスプレイヤーの仲間入りしてたよ、まさかの芸能プロダクションにも所属してるよ、お給料も貰ってるよ。写真集も出たよ、びっくりだよ。
そうして平々凡々だった俺の人生は塗り替えられ、今日も姉に言われるがままにポージング。鳴り響くシャッター音。
「弟くーん!ルーナさんに抱きついてぇー!!」
はーい、よいしょっと、そして姉が俺の顎をクイッと。響く歓声とシャッター音、もうどーにでもなーれ。
ああ、あのありふれた日常に帰れるのかなぁ、俺。
どうかこれが過去の出来事になりますようにと、願いながらも俺は姉に壁ドンされるのだ。
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