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「ね、姉ちゃん?こんな貰っていいの!?」
ゆったりとした笑みを浮かべて、ちょっとしたお詫びよ、と。
姉は悪いと思ったらこうまでしてくれるのか、まぁ今回は思い出の制服を改造だしな、でも1万て、菩薩なのか?ああ、なんか後光が差して見える、なんと優しい姉なんだ。
そうだ、ほとんど見た目も変わってないんだ。校章を間近でよく見ないと違いなんて分からん分からん。刺繍なんて誰も見ない。
つまり問題ナッシング。
「あんまり見た目変になった訳じゃねーしこのまま使うよ、そこまで思い入れないし、終わったら姉ちゃんに渡すわ。」
まだ使うことあるんだろ?と聞くとホントにごめんね!今度イベントあるのよー助かるわぁと、俺が使いたいのは文化祭の数日だけだし、後はもう姉にあげよう、コレ。その方がきっと学ランも幸せだろう。
こうして姉の改造した学ランを手に自分の部屋に戻る俺、それを見送った姉。
一部始終を見ていた母は娘に問う。
「珍しいわね、そんな軽く1万あげるなんて?」
弟の部屋の扉が閉まる音を聞き終えると、弟に向けていた慈愛の表情から、一転、ニヤりと楽しげに歪む口角。
「会社の忘年会の景品。貰いものだから私の懐は痛くないし、それに商品券って言ったって百貨店でしか使えないような使い勝手悪いやつだしね。」
どうせ使わないだろうから丁度良かったの、それにまだあるしね。
うーんと伸びをしながらうそぶく娘に悪びれた様子は一欠片もなく。
「そんな悪どい子に育てた覚えはないんだけどねー」
誰に似たのかしら?
母はそっと溜め息をこぼす。しかしその溜め息に振り返り娘は言うのだ。
「私は母さんが父さんを転がすのを見て育ったのよ?弟なんて余裕よ余裕。」
「あらまあ」
そういう母は微笑むのみ、真実を知るのはいつも女だけ。母と娘はにっこりと微笑みあいそれぞれの作業に戻ったのであった。
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