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暗くて寒い。狭い空間の中に、僕は独りぼっちだ。
誰にも見付けてもらえず、僕はここで何度も何度も眠りに就いた。どれくらい寝たのか、どれだけの月日が経ったのか、僕にはわからない。
ずっとこのまま、何も変わらない毎日を繰り返すのかな?
嫌だよ、寂しいのは嫌だ!
独り寂しく泣いても、誰の耳にも届かない。頬を伝う涙も、雫がポタリポタリと茶色い地面に落ちて、丸い模様を描く。
そんな時、ふと、僕のいる世界が大きく揺れた。
何!? 何が起きたの!?
慌てふためき、悲鳴を上げる。
「ごめんね、ビックリした?」
訊いたことがない声に、僕は首を傾げた。
そこにいるのは誰? 僕のことを見てくれるの 僕に気付いてくれたの?
暗くて光が差し込まなかった僕の世界に、空に一本の亀裂が入った。そこから漏れ出してくる輝きは、とても温かい。ジッと見つめていると、見たことない人の顔が、覗き込んできた。
「可愛いー、どうしてこんなところにいるの?」
そんなこと言われても、僕だってわからないよ。気付いたらここにいた。ママもパパも、どこに行ったのかわからない。僕はずっとここにいる。
光りが差し込む天井に腕を伸ばして、押し開けた。外界は明るく、そよ風が僕の毛を揺らす。僕の家を持ち上げた女の子は、真っすぐに僕のことを見つめた。
茶髪の短い髪、大きな瞳に僕の顔が映る。ボサボサで、泥やホコリや草がついて汚くなった白い毛。
よいしょ、と女の子は僕の家を静かに下ろすと、ゆっくりと手を伸ばしてきた。
叩かれる!
そう思った僕は、ビクリと身体を強張らせる。家の隅に逃げて、出来る限りの威嚇をした。
「大丈夫だよ、何もしないから」
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