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何もしないのに手を出すのは何で!? 僕を叩くんだろ!?
女の子の手に噛み付くと、「いたっ!」と声を上げた。それでも諦めず、もう片方の手で僕の頭を優しく撫でる。
あれ……? 痛くない……?
「綺麗な毛、ふわっふわだね」
優しい手つきで僕の顔を撫で、汚れを払ってくれた。
この人は悪い人じゃないのかもしれない……。
そう思ったら、女の子の手から口を離す。恐る恐る鼻を近付けると、ツンと鼻腔を刺激する鉄の臭いがした。この臭い、僕は知ってる。
「あははっ! くすぐったいよ!」
僕が歯を立てたところを舐めると、口の中いっぱいに鉄の味が広がった。ごめんね、怖くて噛んじゃった……ごめんね? と気持ちを込めて舐めていると、女の子は僕の小さな身体を空高く持ち上げた。
「家にくる?」
その言葉が嬉しかった。僕はすぐに承諾をして、彼女の腕の中で丸まった。
これで僕は独りじゃない、新しい家族が出来た――
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