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家族となった僕
「マロちゃん、ご飯ですよー」
お母さんに呼ばれて、僕は窓辺から駆け下りる。首輪の鈴がチリンチリンと鳴って、僕がここにいるという証明になった。
僕の飼い主さんと、そのお母さん。ちょっとお寝坊のお父さんと僕の家族。リビングにある高めのテーブルに椅子が四つ並んでいる。
廊下の方からペタペタと足音が訊こえてきた。僕はキッチンの横を通り過ぎて、廊下に繋がるドアの前で座って待つ。ゆっくりとドアが開くと、パジャマ姿のお父さんが立っていた。
「おっ、マロ。出迎えてくれたのかー」
お父さんが僕を抱き上げて、額を擦り付けてくる。お父さんは眼鏡をかけ、顔中にまばらなヒゲがあってくすぐったい。僕のヒゲよりチクチクするんだ。
「お父さん、早く食べて。片付かないでしょ?」
「はいはい」
たまの休みなんだから、と文句を言いながら僕をテーブルの上に乗せてくれる。彼女が手を伸ばして、僕を抱き締める。
僕は抱き締めてもらうのが、大好きだ。お母さんもお父さんも優しくて、僕のことをいじめない。お風呂はまだ苦手だけど、毎日綺麗に洗ってくれる。
「でも、珍しい毛色よね……」
「そうだなあ、薄いピンクだもんな」
お母さんが僕の背中を撫でながら、僕のご飯を用意してくれる。磨かれた銀色の皿に映る僕の顔は、白い毛並み――のはずだけど、お母さん達はところどころがピンクだと言う。確かに、茶色いブチはあると思うけど、そんなにピンクっぽいかな?
「いいじゃない、可愛いんだから!」
彼女が僕を抱き寄せる。「こら、ご飯中でしょ!」とお母さんの怒声が響き、僕がビクリと身体を跳ねらせた。それを見て、笑い声が広がる。
何て幸せな家族なんだろ? 僕はずっと、ここにいたい。みんなと一緒に――
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