親友

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「へえ、全体かぁ。まあいい人そうだよね」  窓辺で他の男子と一緒になって話をしている神崎は、この暑い中制服のネクタイ一つ緩めていなくて、制服の着方のお手本みたいだ。  普段の様子から見ても真面目そうだとは思うけど、同時に面白みもなさそうだと私としては思ってしまう。  まあ親友の好みにケチはつけまい。そもそも私は恋をしたことがないので、人の恋にあれこれ言えるほど経験値もないのだ。 「いい人だよ」  自分みたいな人にも挨拶してくれるし、と卑屈そうに言う瑠衣に、そーいうこと言わないの、と軽くたしなめる。  瑠衣は悪戯でもしたかのように小さく笑った。これが瑠衣なりの甘え方だと知っている私は首をすくめるしかない。 「これ、嫌いだから食べて」  私も瑠衣に甘えるようにそう言って、散々箸でつついたプチトマトを突き刺して瑠衣の口元まで持っていった。  ちょっと顔を顰めた瑠衣はそれでも文句を言わずに食べてくれた。  かつん、と瑠衣の前歯に箸が当たった。ごめんと謝ると、次から食べなよとたしなめられた。  仕方ないなぁと言いたげな態度。それでも怒っている様子はない。  うん、これであいこだ。 「次、体育だよね。そっちなんだっけ」 「外でソフト。暑いから嫌になるよ」 「ふうん。神崎の活躍見てきなよ」  ちゃんと声はひそめたのに、声が大きいと慌てる瑠衣の方がよっぽど大きな声だったから、私は思わずけらけらと笑った。
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