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神崎歩が好きなんだよね、と瑠衣が私に言ったのはそんなに前のことじゃない。
確か二年生になったばかりの頃に、世間話でもするかのようにさらりと告げられた。
小学生の頃からの付き合いの瑠衣が恋のことを話すのは初めてで、私は馬鹿みたいにぽかんとしてしまったのをよく覚えている。
聞きたいことは色々あった。人への興味がほとんどないみたいに見える瑠衣の恋なんて気にならないわけがない。
でも瑠衣の顔は強張っていて、私に何を言われるか身構えているかのようだったから、私はなんにも尋ねずにただそうなんだと頷いた。
その時はそれで終わって、いつから好きなのかとか、ずっとそうなのかとか、告白するつもりはあるのかとか、そういったことは全部少しずつ少しずつジグソーパズルをはめ込むみたいにゆっくり尋ねていった。
応援するよ、と言ったのはいつだっただろう。叶いっこないと瑠衣が自虐気味に笑ったのはいつだっただろう。
そんなことをぼんやりと考えていたから、午後一番の体育は散々な結果だった。
もうすぐ球技大会があるから気を引き締めるようにという先生からのありがた迷惑なお言葉は右から左に流すことにした。
体育で疲れた体のままでもう一時間授業を受け、私ほどは疲れていない瑠衣と一緒に学校を後にした。
暑いから帰り道にコンビニに寄らないかと誘って、アスファルトから昇る暑すぎる空気を浴びながら私たちは冷え切った店内に滑り込んだ。
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