親友

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 楽しみな予定はなかなか訪れてはくれないのに、来なくていいと思っている行事は必ず早くやってくるものなのだ。  例えば、瑠衣と約束している冬にイルミネーションを見に行く予定がまだ夏であるためになかなか訪れないように。やりたくない球技大会があっという間にやってくるように。 「こんな暑い中、体育館に一学年全員を集めるなんて、先生たちどうかしてると思う」 「そもそも夏に球技大会って時点でどうかしてるから仕方ない」  私のぼやきに瑠衣が平然と返してくる。  これから始まる球技大会に向けて、体育教師からの有り難い話を聞いた後のストレッチをしているところだ。  二人一組でやれと言われたので、私はもちろん瑠衣と組んで柔軟体操に勤しんでいる。 「瑠衣、痛い。ちょっと、ねえ、痛いって」 「美奈、固くない?全然伸びない」  ぐいぐいと背中を押してくる瑠衣に、痛い痛いと言いながら体を解していると、近くを通った担任に苦笑いされてしまったのが気に食わない。  みんな話しながらやっているし、自由に組んでいいと言ったのは先生じゃないか。  交代、と言って今度は瑠衣の背中を押す。骨張った背中は押せば押すほどよく伸びる。  柔らかすぎる、と八つ当たりのように思って、神崎見てるよと周りに気づかれないように囁いておいた。
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