001.婚約破棄

2/6
前へ
/290ページ
次へ
 この国では十四歳の誕生日を迎えた者は皆、成人とみなされ社交界にデビューするが、私は去年のその時期、仮病を使って屋敷に籠っていた。  社交界に顔をだせば、公爵令嬢である自分は王族の方々にご挨拶をしなければならない。  父は、現国王陛下の従兄であり宰相でもあるので常に国王陛下の側にいる。  当然、王子であるローディ様にも顔をあわせるのである。  あんな想いは、もう嫌だ。  憧れの人に嫌われて、どうして顔などあわせられるだろう。  あれから何度も何故嫌われたのか考えていた。  父や義母(はは)は、生まれた時から決まっている婚約に苛立っての事だろう。  本気ではなかったに違いないと口々に慰めてくれたが私の心には響かなかった。  王子殿下はお父様に、「イリューリアに詫びたい!本気じゃなかった。イリューリアは何も悪くない」と言っていたと言い可哀想なくらい反省してらっしゃったと言う事だけれど…。  私の事…本当は嫌いじゃない?  いいえ!ううん!そんな筈ないわ!  あれは、生まれた時から決まっている婚約を嫌っているのではなく私自身を嫌いだという言葉だった。  お詫びに来られたとは言っていたけれど、その時、私は怖くて会えずに具合が悪いとベッドの中に隠れていた。     
/290ページ

最初のコメントを投稿しよう!

708人が本棚に入れています
本棚に追加