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「そうなのでございましょう?でなければ、いくら公爵家の娘とはいえ私のような冴えない娘のお相手など進んでしてくださる筈もございませんもの…。私が壁の花になってしまっては面目が立たないからと従兄である父から私の相手をするように頼まれたのではございませんか?申し訳ございません。私、分はわきまえております。私の事などお気になさらず。どうか…」
「ち、ちょっと待て!」ザッツはイリューリアの言葉を途中で遮った。
「え?」
「なぜ、そうなる?」
「は?」
「貴女は、ご自分が美しい事を知らないのか?」と呆れたようにザッツが言うとイリューリアは、その言葉が理解できずにまた首を傾げた。
「は?」
「は?ではない。大体、貴女の周りのものは、貴女を美しいとは誰も言ってはこなかったというのか?」
「まぁ、それは父や召使たちは私を喜ばせようと褒めてはくれますが、さすがに身内びいきの言葉を鵜呑みにするほど子供でではありませんもの」と寂しそうに微笑んだ。
「はぁあ?何を言ってる。身内びいき?じゃあ、父親や召使以外は?貴女が今まで関わった者達は皆、目が悪いのか?それとも口がきけぬ者ばかりだったのか?」
「まぁ、私、そういえば十二歳の頃から屋敷からほとんど出た事がありませんでしたし家の者以外と接する事など今までございませんでしたし…。あ、あの…でもクーガン公爵様。そんなに無理をして褒めて下さらなくても鏡は見たことがございますわ。全体的に色素の薄い目立たない幽霊みたいな地味色合いの私ですもの」
「なっ、何を言ってるんだ?」とザッツは思わず呆れて大きな声をあげてしまった。
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