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咄嗟に名をよんだものの、ローディ王子の呼び止める声は力なく、イリューリアには届かなかった。
王子の呼び止める声が届いていたなら無論イリューリアは、どんなに居づらくとも、その場に留まったに違いない。
イリューリアは、王子殿下を敬う気持ちが萎えたわけではないのだから。
自分が嫌われていると思っているだけなのだから…。
そして、嫌われている自分は王子の視界には入る事すら不敬なのだと思い込んでいたのだから…。
「こら、ローディ王子よ!よくも邪魔してくれたな!俺はまだ彼女と話したかったんだがね」とザッツが甥でもある王子に物言った。
「叔父上がイリューリアを虐めていたからですよ!可哀想に!怯えていたではないですか!」
「馬鹿なことを言うな。彼女はむしろお前をローディ王子だと認識した途端、あからさまに青ざめて動揺しているように見えたぞ?」
「っ!そ、それは!」
痛いところをつかれローディ王子は口ごもってしまう。
「一体全体、何が原因で彼女はあんなにも自分を卑下しているんだ?あれは異常だぞ?あれほど美しい令嬢など俺は見たこともないというのに!謙遜とかそんなんじゃない!彼女は本当に自分が冴えないとか美しくないとか思いこんでいるようだったぞ?」
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