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公爵家同士ならば身分的には釣り合っているし、自分ももう十五歳。そろそろ婚約者を決めなくてはならない年頃であることは家庭教師や召使いたちからも言われていたので、そういうことか…とも想像できた。
でも初めての社交の場所でいきなり婚約者候補なんてハードルが高すぎると無垢なイリューリアは頭が痛くなった。
そして先ほどローディ王子がクーガン公爵との間に割って入ってきたことは何となく言わずにいた。
逃げるように戻って来てしまった事に少し罪悪感のようなものを感じていたのである。
「まぁ、カルム!そんな事を言ってもイリューリアはこれまで屋敷にこもっていたのですもの、いくら親戚とはいえ男性と二人きりなんて驚いてしまうのも当然よ。本当に殿方たちはデリカシーというものに欠けて困りものですね」と王妃は困り顔のイリューリアを庇うようにひきよせた。
王妃はイリューリアの頬にそっと手を添えて優しく慈しむような眼差しをむける。
「イリューリア、無理はしなくても良いのよ?でも少しづつ社交の場にも慣れていかなくてはね?国王陛下も私も貴女の事は実の娘の様に愛しく思っているのですよ」
王妃の優しい言葉と笑顔にイリューリアは胸が熱くなった。
王妃はイリューリアの生母エマリアが亡くなった時もそれは優しく自分に声をかけて下さったものだ。
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