001.婚約破棄

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 いや、そもそも好かれている訳ですらなかったのだろう。  あの頃の私は、今よりもっと、もっと、みっともなかったのだから…。  食が細かった私はやせっぽっちで、髪はパサパサ…貧相だった。  豪華なドレスや髪飾りで何とかごまかしていたけれど、ごまかしきれてなかったのでしょう。  そんなみっともない私が父や国王様が乗り気であるのをいい事に、あぐらをかいていたのだ。  この婚約は両家が認め、ローディ様も納得している事だと安直にも思いこんでいたのだ。  あんなにも素敵なローディ様が私ごときで満足できる筈も無かったものを…。  ちょっと考えればわかりそうなものだったのである。  自分が好きだという気持ちで纏わりついて、王子殿下にとってさぞかし、ご迷惑だったことでしょう。  でも、せめて私の容姿だけでも今少し人並みであれば、あそこまで嫌われる事はなかったのかもしれない…。  お義母様は、無理はしなくて良いとはおっしゃってくれたけれど、自己満足だからと私は思いつく限り努力した。  あれから、一生懸命嫌いなものも食べ、朝晩のブラッシングを欠かさず、お勉強も頑張った。  ダンスにマナー、会話術…。     
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