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「ああ、可哀想に!まだ社交界になじめてもいない娘を!大失敗して皆に笑いものにされ、お父様にも迷惑がかかるのが目に見えるよう!」
マルガリータは、ことさらに『失敗』だの『笑いもの』だのという言葉を強調して大袈裟に言いたてる。
『お父様にも迷惑がかかる』という義母の言葉にはさすがにイリューリアも不安にはなったが、自分を心配しての言葉だと自分に言い聞かせ安心してもらわないとと、自分自身に言い聞かせるように言った。
「お義母様、私、そうならないように努力いたしますわ」
「イリューリア、私は貴女の事を本当に心配して言っているのですよ?三年前のあの時だって私は貴女を庇ってあげたでしょう?せっかく悪意に満ちた外界から貴女の事を守ってあげたのに!」
「は、はい。もちろんお義母様が私を心配して下さって下さっているのは分かっておりますわ!お義母様の優しさを疑った事などございませんもの」
それはイリューリアの本当の気持ちだったがマルガリータには伝わらなかった。
「そう…分かっていて、尚、この母の言う事を無視するならしょうがないわ!後から泣いても私はもうなぐさめませんからね!」とそう憎々し気に言い残してさっさと別邸に帰って行ったのだった。
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