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(――だって、責められないよ)
内心、直央は思っていた。
この後、時間がたったら、腹が立ってくるのかもしれない。御堂に対して。今だってもちろん、王子ファンにされたことを思い出すと頭にくるし。
だけど。
(あんな顔、見たら)
今日、この部屋でずっと見てきた。御堂の暗い目の色と、ほんのわずか、意思に反してひきつる口元。
彼が王子ファンと自分を意のままに動かそうとしたこと。人の気持ちをもてあそんだこと。それは確かに、やってはならないことで。
賢くて人望もある彼が、それをわかっていなかったとは、到底思えない。
わかっていて、それでも。どうしても。
(他に、みつからなかったんだよね、きっと。方法が)
頭と心の、折り合いのつけ方が。気持ちの落としどころが。そんな風にしか、きっと。
詳しい事情は、わからないけど。御堂は決して、楽しんでやっていたわけじゃない。
軽い口調とは裏腹に、それだけは苦しいほど伝わってきた。
――御堂も、傷ついている。
だからこそ、もうやめてほしい。あんなこと。
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