第1章 出逢う季節

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 担任はまだ来ていないらしく、集められた生徒たちは皆、思い思いの場所で、話したりスマートフォンをさわったりしている。  出席番号順に並んだ机。「野宮」は教室中央の一番後ろだ。 (……私の、席……)  無数の小さな傷の入った机の表面を、直央は思わずそろりとなでた。  やっと、辿りついた。念願の“南高(みなこう)”に入学できたことを実感して、胸がいっぱいになる。  自分の席に荷物を置いた真璃花が、そんな直央のところに早速遊びに来た。  4月7日。都立南澄(みなすみ)高等学校、入学式。  自宅から通える範囲の高校で、唯一、弓道部のあるこの学校に、どうしても入りたくて。  余裕だった真璃花とは違い、直央は勉強を頑張って頑張って、偏差値最上位層のこの高校に、ようやく合格できた口だ。同じ川原(かわはら)中から来た女子は、真璃花だけ。  そして。
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