90人が本棚に入れています
本棚に追加
/366ページ
担任はまだ来ていないらしく、集められた生徒たちは皆、思い思いの場所で、話したりスマートフォンをさわったりしている。
出席番号順に並んだ机。「野宮」は教室中央の一番後ろだ。
(……私の、席……)
無数の小さな傷の入った机の表面を、直央は思わずそろりとなでた。
やっと、辿りついた。念願の“南高”に入学できたことを実感して、胸がいっぱいになる。
自分の席に荷物を置いた真璃花が、そんな直央のところに早速遊びに来た。
4月7日。都立南澄高等学校、入学式。
自宅から通える範囲の高校で、唯一、弓道部のあるこの学校に、どうしても入りたくて。
余裕だった真璃花とは違い、直央は勉強を頑張って頑張って、偏差値最上位層のこの高校に、ようやく合格できた口だ。同じ川原中から来た女子は、真璃花だけ。
そして。
最初のコメントを投稿しよう!