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念願の弓道部に入った直央だが、これから採寸して発注する袴がまだないのはもちろんのこと、本物の弓も、まだ引かせてもらえていない。
少し前まで、ジャージ姿の新入生たちの練習は、明けても暮れてもひたすら「弓体操」だった。
この練習を説明するには、「エア弓道」という言葉が一番わかりやすいだろう。
具体的には、「胴づくり」と呼ばれる構えの姿勢から始まり、弓を起こして矢を放ち、一礼するまでの動作を行う。ただし、手ぶらで。
一見、どの動きも簡単そうだが、最初の「胴づくり」からして、初心者にはなかなか難しい。筆で数字の「一」の字を書くような足の動きだとか、鼠径部を意識するだとか、普段の生活ではなじみのない動作が多いのだ。
初心者はこれを反復練習することで、まずは弓を引く際の一連の動きと、それに合わせた呼吸の仕方を身につける。
残念なことに、傍で見ている分には、そんな奥深さは一向に伝わらないので、正直あまり格好の良い練習ではないのだが。
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