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ここは不思議な図書館
「お兄さん、どんな本をお探しですか?」
本を眺めているとそう声をかけられた。図書館の司書だ。女のような顔だが体つきはがっしりとしていて性別がいまいち分からない。
落ち着いた素振りは紳士的な老父のようであり、嬉々とした口調は生意気な若い娘のようである。上品な色合いの服は穏やかな貴婦人のようだが、響き渡る声は勇ましい青年のようだ。見れば見るほど不思議な人だった。
「探してる本はないんだけど……貴方のオススメがあったら聞いてもいいかな?」
もちろん、と司書さんが笑顔で答える。待っていましたと言わんばかりの表情だ。
「お兄さんならこれを気に入りそうですね。是非読んでみてください」
手渡された本の表紙には笑顔の女が描かれている。神々しさと薄暗さがぐちゃぐちゃに混ぜられた色合いだった。人間かどうか怪しい姿の女だ。
「……作者は?」
作者の名前がない。不思議に思って尋ねたが司書さんの姿はもうなかった。疑問の答えは、読み終えてからでもいいだろう。そう思って本を開いた。
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