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子供の頃の話
子供の頃、瞼を閉じたその向こうが見たいと思っていた。
瞬きの間、もしくは眠ってる最中。私が暗闇に落ちている間の世界が気になった。その世界は私にはバレないように様子を伺ってこっそりと動いているに違いないと。
例えばぬいぐるみたちが会話をしているかもしれないし宇宙人が私を見ているかもしれない。こっそりと薄眼を開けてのぞいてみたがこれでは意味がない。私が瞼を閉じているその向こう側が見たかった。
だがしかし、それは世間知らずの幼稚な空想であると気が付いた。
歳を重ね大人になればなるほど世界は現実味を帯びてくる。サンタクロースはいない。ぬいぐるみは話さない。お金が絶対的にものを言うし意地汚い連中も多い。
私は瞼を閉じたその向こうの世界への空想などする暇がなくなっていた。眠れば明日がやってくる。そして明日は朝から仕事だ。仕事が終わったらまっすぐ帰ってきて洗濯もしたいし撮りためたドラマを見なくては…。
「見て。もう眠ってる」
「今日もばれなかったね」
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