1/3
2人が本棚に入れています
本棚に追加
/14ページ

 その日は雨が降っていました。傘もささずに神様は外に出ます。雨も涙も混ざってしまい、どれがどれだか分かりません。そうして濡れた神様は、鳥居の横に何かが落ちているのを見つけました。 「おいおまえ、ここはわたしの神社だぞ。どこの誰だか知らないが、そんなところで寝るんじゃない」  神様はそう言って怒りましたが、何かは黙って落ちています。 「おいおまえ、わたしの声に答えなさい。わたしはここの神様だ」  落ちていた何かが顔を上げました。それはそれは美しい、女の姿をしています。 「わたくしは、山向こうに住む妖怪です。大きな戦いがあって、ここまで逃げてまいりました。あなたがここの神様ならば、どうかどうかこの子だけ、この子だけでもお救いください」  女の妖怪はそう言って、胸に抱いていた子供を神様に差し出しました。それは小さな狐の子。今にも壊れてしまいそうな子供を抱いて、神様は女の妖怪を見つめます。 「わたしは神様だから、おまえの願いを叶えてやろう。ほらほら、願え。ほら願え。その傷治してみせようか」 「わたくしの願いは一つだけ。どうかどうかお願いです。その子を救ってくださいな」     
/14ページ

最初のコメントを投稿しよう!