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参
その日は雨が降っていました。傘もささずに神様は外に出ます。雨も涙も混ざってしまい、どれがどれだか分かりません。そうして濡れた神様は、鳥居の横に何かが落ちているのを見つけました。
「おいおまえ、ここはわたしの神社だぞ。どこの誰だか知らないが、そんなところで寝るんじゃない」
神様はそう言って怒りましたが、何かは黙って落ちています。
「おいおまえ、わたしの声に答えなさい。わたしはここの神様だ」
落ちていた何かが顔を上げました。それはそれは美しい、女の姿をしています。
「わたくしは、山向こうに住む妖怪です。大きな戦いがあって、ここまで逃げてまいりました。あなたがここの神様ならば、どうかどうかこの子だけ、この子だけでもお救いください」
女の妖怪はそう言って、胸に抱いていた子供を神様に差し出しました。それは小さな狐の子。今にも壊れてしまいそうな子供を抱いて、神様は女の妖怪を見つめます。
「わたしは神様だから、おまえの願いを叶えてやろう。ほらほら、願え。ほら願え。その傷治してみせようか」
「わたくしの願いは一つだけ。どうかどうかお願いです。その子を救ってくださいな」
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