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 百六十センチあるかないかの身長(本人は百六十一と言い張るが、身体測定の結果を見てしまったのでそれが小さな嘘だと知っている)、細くて華奢な身体つき、色白で、髪は光に透けるとほんのり亜麻色に輝く。アーモンド形の目にドールのような長いまつ毛がびっしりと生え、少しふっくらした唇はリップを塗ったみたいに色づいている。彼の母親は彼を生んですぐに亡くなったそうだが、有名な女優だったらしい。兄は芸能人だし、宵だって下手なアイドルはだしだと思う。 「ねー、ここもわかんない」 「どれ?」  性格はほんの少し臆病で、甘えたで、一生懸命だけど計算高いところもある。でも、たとえ演技だとわかっても、彼のことを放っておけない。宵は可愛いのだ。  ただの友達のことを、こんなふうに思うだろうか。  答えはもうずいぶん前に出ている。  宵が好きだ。  ただの友達で夢精なんてしないし、ただの友達のことを考えて抜いたりしない。  だけど、宵が自分のことを友達と思ってくれている間は、友達でいたい。我ながら諦めが悪いが、そう決めて、今もこうして一番近くにいる。だから自分にとって、この時間はとても大切なのだ。 「森? もう終わったの?」 「ん? あー、うん、あと一問……もう終わる」 「えー、待ってよ」 「待って、ってなんだよ」 「だって」  拗ねたように膨らんだ柔らかいラインの頬が、ほんのり火照った色をしている。 「宵も暑い?」 「え?」 「ほっぺた、暑そう」 「……うん、かも、ちょっと」 「ヒーター消すね」 「うん、ありがと」  ピ。スイッチを押すと、ファンがゆっくりと回転をやめる。手を伸ばした緑茶の一.五リットルボトルは気づけば空で、それを見たら余計に喉の渇きが気になる。     
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