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「…………ぁ……ぁ……」
喘ぐように息をしながら、睫毛を、唇を、細かく震わせる。それはじわじわと広がり、フローリングに染み出していく。よぼど我慢を重ねていたのだろう、太腿や膝まで濡らしながら、彼はそこに大きな水たまりを作った。
耳まで真っ赤に染め上げた宵が、こちらを見上げて、うわ言のように舌足らずに呟く。
「…………おしっこ…………漏らしちゃった…………」
信じられない光景だった。
とろんと夢見るような顔で、宵は微笑んでいるのだ。
生温い水が靴下を濡らしているのに、湿った感触で気づく。足の裏を見ると、彼の尿がしっとりと染みていた。
ぷつん、と、何かが切れた音を聞いたかもしれない。
ぼうっと森を見上げたまま、宵が蕩けそうに笑う。
「森……たってる……」
「……んなこと」
「たってる」
「うるさい」
「へいき。俺も、たっちゃった」
「……ばか」
なんとかそれだけ絞りだし、森はチェストを漁って部活用のスポーツタオルを引っ張り出した。一本はフローリングを拭っただけでびっしょりになり、二本目を宵に放る。チェストの同じ段から部活用のジャージと、もう一段下から下着も放って。
「俺、出てるから。着替えたら呼んで」
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