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 ヒーターを焚いた温かい部屋。  教科書、ノート、参考書、過去問集を広げて、かりかりとシャーペンを走らせる。 「ねえ、ここは?」  上目遣いに小首を傾げる宵(しょう)がペン先で指す問題に、 「これ。この式代入して、こう」  数式を書き込んで、促す。 「んー……」 「わかんない?」 「あ、わかった」  ぱっと顔を輝かせ、ありがと、と呟き、彼はまたノートに目を落とした。  友達とテスト勉強に励む、勤勉な放課後だ。得意教科が違うから教え合うことができるし、孤独に机に向かっているより飽きずに続く気がする。DVDとゲームとお菓子は用意してあるけど、それらはあくまで休憩時間のためのものだ。  これはテスト勉強。森(しん)は何度目かに、心の中で繰り返した。  宵は可愛い。     
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