長男・春彦②

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「おい、キラキラ女!見たぞ!」 「見た?何を?」 「トボけんな!入籍するんだろ!」 「!」 夏輝さんにニヤニヤしながらそう言われて、チラリと彼の様子を伺った。困ったような、なんとも言えない複雑な顔で私を見ている。 「そんな話になってんなら言えよ、水臭えな!」 ポン、と肩を叩かれた。だけどそこに彼が割って入る。 「だから、別にそんな話になってないって」 その、呆れたような口調。グサ、と棘が胸に突き刺さった。 「明日も早いし、俺達は寝るから。この話は終わり、」 お前も早く寝ろ、と付け足して、彼は私の手を引いた。 渡り廊下を進む、彼の背中。私は嫌な汗をかいていた。ちょっと冗談で言ったつもりだったのに、夏輝さんのあのリアクション的に、きっとご両親も見ていたはずだ。 勿論、彼本人も。 部屋に入ると、「座って」と座椅子に促された。黙ってそこに座る。と、彼はいきなり核心に触れた。 「…あれ、どういう事?」 気まずくて、「あれって何?」と濁す。 「今日の昼間の。父さんも母さんも、みんなで観てた。俺達、そんな話してたっけ?」 彼の声のトーンは暗かった。怒っているのと紙一重くらい。 もっと明るい感じで茶化してくれたら、笑い飛ばせたのに。全くそんな雰囲気では無い。
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