次男・夏輝①

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従業員用の部屋は、そんなに広くない。4畳に、小さな押入れが1つ。支給されるのは布団が一式。あとはテレビやテーブルを好きに持ち込んで良い。 部屋に入ると、彼女は部屋の隅に敷かれた布団の上に、背を向けて座った。どうやら、目を合わす気は無いらしい。 「伊織、」 呼ぶと、彼女の肩がピクリと動いた。明らかに様子がおかしい。 「…伊織…?」 近寄って、肩に触れる。と、また震える肩。何をそんなに怯えているんだろうか。 そっと顔を覗き込んだ。彼女は泣いていた。 「…えっ…、どうしたんだよ…?」 思わず、抱き寄せる。だけど彼女はその腕を振り解いた。 「…やめて…!」 「何で?何がそんなに嫌なんだよ…!」 尚も泣きじゃくっている彼女。もう訳が解らない。 「何かあるなら聞くから、言えよ…!」 「…ッ…」 何も言わないから、痺れを切らして尋ねた。 「…もしかして……、妊娠…?」 決死の思いで尋ねたのに、彼女は鼻で笑った。 「……妊娠なら、良かったかもね」 …え?違うの?じゃあ、何…? 本気で訳が分からなかった。妊娠じゃ無いなら、何で突然その態度? 「…俺、何かした?」 すると彼女は力なく笑って、 「夏輝には一生分からないよ、」 と呟いた。 「…もう、良い?寝るから、出てって…!」 突き飛ばされて、心が折れた。取りつく島もない。 「…分かったよ、」 立ち上がって、部屋から出た。 訳が、分からない。全く身に覚えがない。 こんなに大切で、愛しいと思ってるのに。 本当に、近々別れを告げられるかもしれない。 扉の前に立ち尽くして、絶望していた。
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