代わり映えしない、愛しき日々に

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 街灯の無機質で白い光の中で見上げる夜の団地は真っ黒で静かで、まったく動こうとする気配がない。ところどころまだ明かりのついている部屋はあるけれど、そこで起きている人たちもみんな静かにしている。  もちろん昼間だって賑やかとは言えないけど、夜の静けさと比べたら全然生きた(、、、)気配を感じられる。  まるで、大きな動物が死んで横たわっているみたい。  思わずそんな感想を抱いてしまうような暗くて静かな景色の中をただ歩く。通勤中に外を歩くときはいつも何かしら音楽を聴いているけど、どういうわけかこういうときってそれがもったいないように感じる。それくらいだったら鼻歌で十分だ。 「~♪ …………」  といっても、開始数秒で痛感する自分の音痴加減に止められてしまうんだけど。  ちらほらと見える明かりは、まるで低空に輝くとても近い星みたいに感じられる。そういうロマンチックな感性がまだ残ってたんだなぁ、と感動すればいいのかいつまでも成長しない自分に呆れたらいいのかよくわからない感想を持って足が進んでいく。  夜には、夜にしか聞こえない音がある。  日中だったら車とか近所の人たちが立てる生活音に紛れてしまうような風の音とか、それこそこの時間帯に聞くとどこか貴重な物のようにも思える生活音だとか、そういう色々な音が聞こえてくる。  その分、わたしの周りがどれだけ静かなのかがわかって、そのちょっとした寂しさがどこか心地いい。  ちょっと歩いたところに見えた自販機で、ちょっと迷った後わたしは缶コーヒーのボタンを押した。出てきたときの手を火傷するんじゃないかっていう熱さが、なんとなく気持ちよかった。
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