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「だれかと思ったらびっくりしたわー。どしたんこんな朝早く図書室に来て」
「オリエンテーションで借りとった本を返し忘れとったんで来ました」 そう言うと、小難しそうな小説を片手に走り寄ってきて、あたしの向かいのいすに座った。
オリエンテーションって確か四月に一年生が全員一人一冊の本を借りるやつよな。今九月やん、返すの遅すぎやろ。
そう思うと、まじかーと苦笑いになった。
「先輩はなんで一人でおるんですかー」
「えっ、あ、まぁ図書室に一人でおったら落ち着くんよな」
唐突に聞かれたせいで、失恋の悲しみを誤魔化すような言い方になってしまったけど、いつもは図書室におったらほんまに落ち着くし、間違ったことは言ってない。
「ふーん。そうなんすか。ってか司書の人おりませんよね?返せんやーん」
そう言って座ったまま、ぐるぐると周りを見渡している。
そんな後輩君を何も考えずにぼーっと見ているとまた無意識にため息が出る。
それには後輩君もあたしに何かあったのだろうと察したようで、あたしの顔をじーっと見てきた。
「え、どしたん。そんな見てきて」
「何かあったんすか」
「いや、まぁ、いろいろあったんよー」
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