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「あ…あ、兄じゃーーー!!!」
「どうした!?」
寝ているぼくの部屋に飛び込んできたのは、紛れもなく兄じゃだった。兄じゃが開けた障子からは、昼の残り香を示す明るさが入ってきた。
「兄じゃ!兄じゃ、さっきそこにお化けがいたー!!」
「夢でも見たんだろ?」
そう笑う兄じゃに、さっき見たことを事細かく話すと、笑っていた兄じゃの顔が、だんだんと青くなってきた。
「兄じゃ、ぼくが見たのは本当に夢だったんじゃろか?」
「ゆ…夢だ!夢に決まってる!!絶対、夢だ!!」
兄じゃは何度も頷きながら、言い聞かせるように、何度もそう言った。
それから、兄じゃは、ぼくにいじわるをしなくなった。
今でも生々しく思い出せるあの時の夢の話をする度に、兄じゃに「あれは夢だ!何度も夢の話をするな!」と怒られた。どうやら、兄じゃはぼくの夢の話が怖いらしい。対してぼくは、あの夢のお化け達の様子を思い出し、お化けがあまり怖くなくなった。
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