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僕は壊れて当然だ
僕はご主人を笑顔にするために買われたのに、何故、ご主人は泣いているのだろう?
◇◇◇◇◇
僕は売れ残りのロボットだった。もう少しで返品処理されるところを、ご主人のお父さんが買ってくれた。
「私の代わりに娘の側に居てやってくれ」
僕が最初に受けた命令は、それだけだった。
僕は命令の意味が分からず、ただご主人の側を付いて歩いた。ご主人は怒ってお父さんに「こんなのいらない!」と言った。
「娘と遊んでやってくれ」
次に受けた命令だった。僕は遊び方が分からなかった。ご主人に聞くと「かくれんぼするから、お前、隠れなさい」と言われた。僕は隠れた。お父さんが僕を見つけるまで隠れていた。
「娘を笑わせてくれ」
笑わせる方法が分からなかった。ご主人をくすぐったら笑ってくれたけど、その後すごく怒られた。
「そうじゃなくて、楽しくて笑えるようにだな……えーと…笑顔にしてほしいんだ」
お父さんは少し困ったように言った。僕はご主人が笑顔になる方法が分からなかった。ご主人に聞いたら「知らない」と言われた。ご主人自身も、笑顔になれる方法が分からないらしい。とても難しい問題だ。
僕は再び、ご主人の側を付いて歩いた。家の中、家の外、何を見て、何をするのか、ずっと見ていた。
テレビを見て、少し笑った。散歩中の犬を見て、少し笑った。公園で遊ぶ子供を見て、少し俯いた。公園が嫌いなのかと聞いたら「別に。好きでも嫌いでもない」と言われた。公園で遊ぶ子供はとても楽しそうだった。だから、公園で遊びましょうと言ったら、ご主人に怒られた。本当は、公園が嫌いなのかもしれない。
お父さんにお願いして、丈夫なロープといらない椅子をもらった。それを腕に括り付けてブランコにした。ご主人に乗ってくださいとお願いした。ご主人はしぶしび乗って、遊んでくれた。少し笑顔になった。
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