再会

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「りんごちゃん、いい?真っ直ぐ帰って。そんでもって旦那に謝りな。今なら許してくれるよ」 私はポロポロと少女のように泣きながら頷く。立ち去る多田忠の後ろ姿はぼんやりとしか写らない。10mほど行って振り向いた多田忠が呟いた言葉はホームに入ってくる電車の音でかき消された。 「ただいま」 ガランとした部屋。人の気配が無い。私は不安になって旦那を探す。 「あ、おかえり。遅かったね?」 腰の回りにタオルを巻いた旦那が浴室から出てくる。私は泣きながらごめんなさい、ごめんなさい、と謝る。旦那は笑いながら、でも少し悲しそうにいいよ、大丈夫だよと言ってくれる。私はただただ泣きながら謝る。 「大丈夫。ここから再スタートしよう。今日から、ね?大丈夫だから」 多田忠は私の肩を背中をさすりながら言う。ごめんね、ごめんね、本当にごめん、忠。 「大丈夫だから。やり直せるから。今日から新しい夫婦だから、だから大丈夫」 多田忠はそう言いながら私の頬を伝う冷たい涙を人差し指で拭ったのだった。
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