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「あれ……誰だったかな?」
岩に隠れて、パスワイツに対峙している少年を見た。
緑の革の服を着ている。手には棍棒のようなものを構えて、パスワイツをしっかりと睨みつけている。
構えを見ると、素人ではないと分かる。しかし、サグゥの記憶にあんなに肌の茶色い人は見たことも聞いたこともない。
いや、聞いたことはあるか。
村長のティーレッジ様の難しいお勉強の話に、赤褐色の人間が出てきた。なんだっけ? ……神様?
ティーレッジ様の話は眠いから覚えていない。それに、そんな話を思い出そうとしている場合じゃない。
パスワイツが少年に向かって駆けだしたと同時、サグゥも岩陰から飛び出した。
パスワイツの脚は速い。すり足で後ろに下がる少年との距離を一気に詰め立ち上がり、太い二本の前足を振り下ろした。
「グウッ……!!」
棍棒でなんとか受け止めた。パスワイツの攻撃を受け止められるということは、やはり鍛えられている。
「やああ!!」
ようやくパスワイツの背後に追いついたサグゥが跳び上がり、首に銛を突き立てた。
シャー!
パスワイツの断末魔の叫びとともに、白銀の体毛が赤い血に染められる。
突き刺さったままの銛の痛みに、悶えながらパスワイツは少年から離れた。
「キミ、大丈夫?」
「……?」
動転して言葉の意味が分からないのか、首を傾げる少年。
だが、すぐにその顔は険しいものに変わった。
「××××!! ××××!!」
「……えっ?」
彼がなにを言っているのか分からない。ちゃんと聞き取ろうと耳を澄ませたが、聞こえたのはうなり声だった。
グルルル……。
首から血を流しているパスワイツがすぐそばに立っていた。
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