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エピローグ
エピローグ。
今回の事件を大団円と言われたら、決して丸く収まるような出来事ではない。かと言って、僕の大切な大切な五体が不満足になったというわけではない。むしろ今は事が終わり、これほどにまで清々しいかってくらいに晴れ晴れとした気分だ。おみくじで末吉を引いてしまい、内容はことごとく悪いことしか書いてなかったけれど、金運はこれまで見たことないほどべた褒めされてあったような。友達の家でパーティーをしており、買い出しジャンケンで負けてしまい、仕方なく外出したところで後ろから一緒に友達の家で遊んでいた好きな子が一緒についてきたような。
もう、今すぐに死んでもなんら悔いのないくらい、気分が高揚していた。
六月七日の夕方七時を過ぎた頃。
七時はほぼ夜だが、六月となると日の入りが遅くなるためあまりツッコミはナシで。
場所は、繁華街や住宅街から離れた場所。辺りは木々が生い茂り、車の出入りが激しい道路まで一キロ先を歩かなくてはならない自宅前。道路から我が家までの森林のトンネルから点々と灯す街灯の列は、僕の頭上をゴールとして止まっている。時代を感じさせる裸電球の街灯は、恐らくアンコールのように照らすこいつらだけだろう。だが、それがいい。この味がある色合いといい、形といい、佇まいに僕は気に入っている。
通っている学ランも、そろそろ夏服に着替えなくちゃなあ。なんてことを考えていると、トンネルから一人の少女が歩いてきた。
――僕は、そいつを知っている。
ポツリポツリ、と彼女を街灯が照らす。まだ太陽は沈んでいないけれど、この辺りはどうにも枝たちがドーム状に空を覆っているためにいつでも夜のように暗い。そのため、少女が光から出たと思ったら闇へ消え、また出てきたと思えば消えるという、どこかホラーのような演出を見せるため、どこか恐怖さえ感じる。
しかし、こちらへ歩み寄る少女の姿は遠目でも分かるほど、どこか寂しく、どこか悲しくも見える。教会へ向かって歩くネロよろしく、一歩一歩の足取りが重苦しそう。
――僕は、そいつを知っている。
ここは、男である僕が駆け寄って今すぐにでも倒れそうな少女へ手を差し伸べてあげるべきなのだろうが――僕はそれを許さなかった。というよりも、そんな勇姿や雄姿を見せるほど男らしい自分なんて生まれ持ってない。
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