太陽

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太陽

 私は太陽が嫌いだ。  太陽は一方的に私を照らす。なのに、勝手にいなくなる。  ずっと寒いだけなら、平気なのに。  アキは太陽みたいな子だ、と思った。  だから嫌いだ。  私が昼食前のトイレに行ってる間に、勝手に机を正面同士くっつける形に移動させ、弁当をスタンバイしてるのを見てイラッとするくらいには嫌いだ。もちろん一緒に食べる約束なんてしてない。  なのにアキは笑顔で私に手を振っている。空気を読めないと言うか、 「あなたって無神経よね」 「えー、ショック。初めて言われたんだけど」  とか、アキはのたまう。このクラスの人間は底抜けに寛大なのかもしれない。  ――いや、それはないか。今の時間に至るまで、アキ以外は誰も声はかけてこなかった。やっぱり、アキが特殊なんだろう。 「私、昼は外で食べるから」 「近所のコンビニ改装中だし、うちの学校は売店もないよ。あと台風が近づいてるから雨降るかもだし」 「じゃあ抜きでいい」  ため息をついて、私は席につく。いちいち机の向きを戻すのも面倒だ。アキが話しかけてくるのは変わらないし。 「あげる」  私の机に、ラップに包まれた俵型おにぎりが転がってくる。アキはそれとは別に弁当箱を開けていた。 「部活メシだし、気にしなくてオッケーよ。私の特性スパムマヨスペシャル」 「絶対いらない」  聞いただけで胸焼けしてきた。見れば、アキの弁当箱の中もギトギトのマヨだらけだ。  それをアキは美味しそうに頬張っている。他人の食事風景は和むと言うが、口周りマヨだらけなのはちょっと……。  ……いや。なんで私は彼女の顔をまじまじと見てるのか。馬鹿みたい。  と、思っていたら、アキと目が合った。 「なーに?」  居心地が悪い。  ごまかしの話題を探して目を泳がせてると、アキの髪の毛が目に留まった。 「なんで髪、染めてるの?」 「かっこいいでしょ」  即答だった。それ以上の理由付けもなかった。ああ、本当にそれ以上のことは何も考えていないんだ。“そう思ったから、そうしてる”に過ぎないんだ。  でも、なら、“そうしたくなくなった”ら、どうするのだろう。 「ーーなんで私に絡んでくるの?」
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