距離感

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 生まれつき、特異体質だった。  皮膚が異常な程に冷たくて、触れた人を凍傷にするくらいだ。  だから誰かへ直に触れたら大変なことになるから、厚着している。  しかし、私が身につけるモノは、全て氷のように冷たくなる。  私は自分の冷たさはわからないけど、周囲の温度は感じられる。  いつも寒いのは、そのせいだ。  冗談のようで、しかし私にとっては紛れもない現実。アキにもそれを説明した。その上で、 「受け入れられる? 私を」  アキはぽかんと口を半開きにしている。私の話がうまく伝わったのかはわからない。  しかし、ゆっくりと私へと手を伸ばす。  きっとアキが想像しているよりも冷たく、痛いだろう。  でも、それでも。私を恐れないでいてくれるのなら、私は――  アキが、私の手を握った。
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